【tubu.2】質素倹約赤血球【酸素の運び屋】
2.質素倹約赤血球

赤血球トラック
( @∀@)
みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。
皆さんの身体のなかには、赤い血液が流れております。
その血の成分の多くが赤血球です。
血のなかにこの赤血球がめぐっているからこそ、皆さんの身体はほんのり赤みを帯びています。
今回は、赤血球の形からその質素倹約ぶりを暴きたいと思います。
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ドーナッツみたいな赤血球
血液の中に含まれる赤血球。では、赤血球の形を思い浮かべてみましょう。 さて、どんな形でしょう?
(図:赤血球の外見)
真ん中がくぼんで、まるでドーナッツのようですね。
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凹んだ形のどこがいいの?
そもそも、なぜ赤血球はへこんでいるのでしょう? まず、赤血球の働きを確認してみましょう。
赤血球の大きさは、およそ 8μm(マイクロメートル)。 赤血球はヘモグロビンというものに酸素をくっつけて、血管を通って身体中に酸素を運びます。
体の隅々に張り巡らされる、直径 5〜10μm の毛細血管をくぐり抜け、 末梢の細胞たちに酸素を渡しているのです。あれれ、なんだかおかしくないですか?
毛細血管の最小サイズよりも赤血球って大きいではありませんか!
なんだか、赤血球が血管に詰まってしまうのでは・・・?。もし、赤血球が普通の細胞のように丸っとしていたら詰まってしまいそうです。
安心してください!狭い血管を前にした時こそ、赤血球特有のフォルムが役に立つのです。 ドーナッツのように真ん中がへこんでいるので、いい具合に折れ曲がったり、押しつぶされたりしてうまく毛細血管を通過できるのです!
赤血球ってすごい!
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凹みは質素倹約の精神の証
赤血球の凄さは伝わったかと思うのですが、そもそもなぜ赤血球の真ん中はへこんでいるのでしょう?
それは、とある大事なものがないのです。 答えは、なんと核です!!!!
もともと赤血球の赤ちゃん(前駆細胞)である赤芽球には、核はあります。しかし、 赤芽球が赤血球になって行く過程で、核は捨てられてしまいます。
核には、DNAといった大切な情報が含まれているのに・・・赤血球は、細い毛細血管をくぐり抜けるために核を捨てるのです! なんという英断!
加えて、赤血球にはミトコンドリアもありません。
代わりと言ってはなんですが、細胞質で細々と、解糖系を回してATPをゲットしています。
簡単にいうとエネルギーを簡単にたくさん作れる装置(ミトコンドリア)を持たずに、エネルギーを少ししか作れない装置(解糖系)だけで動いているのです。
(図:赤血球をトラックと考えた時のイメージ エンジン-解糖系 荷台-ヘモグロビン 積荷-酸素O2)
なんと質素で慎ましいことでしょう。
実は体細胞の中で最も多い赤血球。 私たちの体を支える大事な細胞は、質素倹約の精神のもと、日々酸素運送業を営んでいるのです。
参考URL
参考文献
ハリソン内科学 第5版 p647 〜 p648 メディカルサイエンスインターナショナル 福井次矢 黒川清 監訳
内科学 第10版 p1882 〜 p1883 朝倉書店