【tubu.23】研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」~免疫編③~【補体について】
もくじ!
23.研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」~免疫編③~
前回→【tubu.22】研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」~免疫編②~【自然免疫】
( @∀@)
みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。
前回は自然免疫で働く隊員たちについて説明しました。
今回は自然免疫たちの武器である「補体」についてです。
-
補体って何?
補体とはなんでしょうか?自然免疫の武器とお話ししましたが、何かを補うだけのものでしょうか?
いいえ、実は違います。
補体が発見された当初は「補体は免疫の補助」と考えられていました。このため「補」体と書きます。
しかし、実は補体には色々な作用があり、自然免疫の中で重要な役割を担っています。
「補う」だけなんてとんでもない!脇役ではなく主役の一人なのです。
(今、私が名前をつけるとしたら非特異的抗体とか、複合抗体とかになりそうです。笑)
それでは今回はいよいよ、免疫の最初の山場である「補体の働き」を見ていきましょう!
-
補体は自ら動く武器である
補体には、色々な武器がありC3、C4、C5・・・と面倒で覚えにくい名前がついています。
つまり、いろいろたくさんあるよってことです。
これらが順番に反応することによって、敵を倒したり、仲間を呼んだりするのです。(連鎖反応を起こすイメージ)
武器が勝手に敵を倒すって、なかなかに斬新。まるで最近のAIみたいですね。
人間はこの補体を進化させることで、免疫力を高めて来ました。
-
補体は連鎖して働く!
この補体という武器が反応する3つのパターンが存在します。
3つあると言っていますが、行き着く先は同じところです。
説明するのにどうしても反応の経路の名前は必要なので、書いておきます。
主流:第二経路
古典経路の後に、発見されたため第二と名がつくが、これが一番最初に働くし、一番重要。
ブースト1:レクチン経路
その名の通りレクチンを使う。そういう名前もあるのねくらいでOK。
ブースト2:古典経路
一番最初に見つかった補体の経路。結局は第二経路をブーストするための経路。
これらの反応により、補体は敵に穴を開け、自然免疫隊員を呼び集めるのです。
-
第二経路は「2」という名前なのに、一番最初に働く!!!
まず、はじめに説明するのは第二経路です。
補体の勉強を邪魔するのが、このネーミングセンスのない名前だと思います。
医学用語や科学用語ってこういう面倒な名前のやつ多いですよね。(後学のために改名してほしい笑)
第二経路に出てくる武器にはこのようなものがあります。(図)
細菌が体の中に侵入して来たとします。
するとまず、C3が反応します。
C3は、自然免疫の隊員に、自分の帽子をお手紙として送信します。
C3はそれだけでなく、細菌の表面にカプッと噛み付きます。
C3が噛み付いている細菌は、マクロファージの大好物。すぐに目につき、食べられてしまいます。まるでC3はふりかけのようですね(オプソニン化)。
またC3は、強気なのかC5を呼び寄せます。(①)
C3の命令でC5もお手紙を放出し、自然免疫の隊員を呼び寄せます。(②)
こんな臆病そうなC5ですが、実はとても勇敢なのです。(③)
C5はなんと、細菌の表面にくっついて、ドリルを作り始めます。
このドリルを形成するのがC6、C7、C8、C9です。(膜侵襲複合体、略称MAC。)(④)
ドリル(MAC形成)が完成すると、細菌に穴を開けます。これによって、細菌は滅びてしまうのです。(⑤)
この一連の流れが、補体が武器と言われるゆえんです。
-
レクチン経路と古典経路はブースト
レクチン経路とか、古典経路とか、面倒な名前がついていますが、その中身は簡単。
「いかに細菌の表面にC3を効率的に引き寄せるか」
ただそれだけです。
まず、レクチン経路ですが、これはレクチンが細菌の表面にくっつくことで、C3を呼び寄せます。まるで餌のよう。
次に古典経路ですが、これはマクロファージから情報を受け取った肝臓から出てくるCRP(C反応性タンパク質)を餌にしてC3を呼び寄せます。
(古典経路もレクチン経路も間にC1、C2、C4が関係しますが、それは教科書で読んでね)
これを見るとわかる通り、結局3つの経路とか言っていますが、C3を引き寄せてからは基本的な流れは全て同じです。
数字やへんてこりんな名前が邪魔をして、複雑に見えますが、そこらへんを取り除けば、まぁ意外と簡単じゃない笑
今回はウジャウジャ、経路について話しましたが、言いたいことは一つです。
「補体が働けば、敵に穴があき、自然免疫の隊員たちがやってくる」
とにかくこれだけがわかればOK。
へんてこりんな名前や数字に負けずに、まずは流れを理解してみてはいかがでしょう?
次回の免疫学④は、獲得免疫についてお話しします!
次回→【tubu.25】研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」~免疫編④~【獲得免疫】
【tubu.Ex1】医学生から始める診断推論!~おすすめの本の紹介~【臨床力をつける!】
参考文献
エッセンシャル免疫学 第2版 メディカルサイエンスインターナショナル 笹月健彦 監訳
year note 第26版 メディックメディア 免疫pF-2
参考URL
株式会社 医学生物学研究所 自然免疫と獲得免疫
http://ruo.mbl.co.jp/bio/product/allergy-Immunology/article/Natural-immunity-Acquid-immunity.html