【tubu.24】怪我した皮膚は、なぜ治ると硬くなる!?【ヒビ割れ・あかぎれ】
24.怪我した皮膚は、なぜ治ると硬くなる!?
前回→【tubu.Ex1】医学生から始める診断推論!~おすすめの本の紹介~【臨床力をつける!】
( @∀@)
みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。
寒くなってくると、洗いものをしているときにヒビ割れやあかぎれが起こりますよね。(よく切れますbyくま)
このように皮膚を切ったり、擦りむいたりして怪我をしたとこは誰でもあると思います。
その傷が治った時、皆さんあることに気がつきませんか?
怪我をする前と比べて、皮膚が硬くなったり伸びにくくなっていませんか?
小さい怪我なら元のように治ってしまいますが、大きな怪我や、深い傷などが治った後は白っぽく硬くなってしまいますよね?
これはどうしてなのでしょう?なぜ皮膚はふさがるにもかかわらず白く硬くなってしまうのでしょうか?
今回は、怪我をして治るとなぜその部分が白く、硬く、伸びにくくなるのかを考えます。
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小さな傷と大きな傷の違い
まず、小さな傷を考えます。縫い物中に針がプスっと刺さって血が出た時を考えます。
小さな傷ができた時、傷は皮膚表面を覆っている細胞(上皮細胞:一般的な皮膚の細胞)によって綺麗に修復されます。
そのため、怪我をした部分は元と変わらない見た目に戻ります。
しかし大きな傷はどうでしょう。
例えば、転んで大きな切り傷を負ったとします。
大きな傷は、上皮細胞の力だけでは修復することができません。
そこで、助っ人が現れます。
その名も線維芽細胞! その名の通り線維を作り出す細胞です。
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助っ人、線維芽細胞とは
ん?線維ってなんぞや!?
線維って、皆さんご存知のコラーゲンのことです。
線維芽細胞はコラーゲンをたくさん作り出し、上皮細胞だけでは修復できなかった部分を埋めてくれます(線維化・瘢痕化)。
これで大きな傷も無事ふさがることができます。
ではなぜ、大きな傷が治ると白く、硬く、伸びにくくなるのでしょう?
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治った皮膚を硬くする意外な犯人!
実は、犯人は…
このコラーゲンなのです。
コラーゲンで埋められた部分は、元の皮膚とは異なり、コラーゲンの線維で埋め尽くされます。
このため、クッション性がなく硬くなるのです。
一見、コラーゲンと聞くとやわそうと思うかもしれません
普通の皮膚に適しただけのコラーゲンがあれば、そのお肌には弾力があります。
しかし、傷が治る時にコラーゲンがぎっしりと詰め込まれてしまうと、白く固い傷跡になってしまうのです。
スポンジケーキはふわっふわでおいしいですよね。けどあの生地がギッシリつまったらフワフワ感も減り、味気なくなりますよね。そんな感じです。
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見えるところだけじゃない!?線維化
皮膚が白く硬くなる犯人がコラーゲンでした。
ですが、実はこのコラーゲン、硬くするのは皮膚だけではないのです。
身体のなかでも線維化を起こすのです!
有名なものは肝臓が硬くなっていく肝硬変、肺が硬くなっていく間質性肺炎などです。
肝臓は皮膚と同じように、お酒やウイルスで傷つき、治る過程でコラーゲンが増えて硬くなります。
一方、間質性肺炎は、肺の壁の中にコラーゲンが増えて、硬くなり膨らみにくくなったり破れたりします。こちらは原因がはっきりとわかっていません。
このように、線維化は傷がつけばどこでも起こり得ますし、原因がはっきりしてなくても起こることがあります。
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コラーゲンは危険なものなの!?
これまでのような話をすると、なんだかコラーゲンが悪者にしか見えてきませんよね。
「健康のためにコラーゲンを飲むのは危ないの!?」「肌にコラーゲンを塗ったらプルプルどころか硬くなるんじゃないの!?」そう思う方もいるかもしれません。
はっきりと言います。(2018年の時点での話です)
まっっっったく関係ないです。
肌にコラーゲンを塗ることは、保湿作用として有効ですが、皮膚から吸収されることなんて、ほとんどないです。
コラーゲンを飲んだとしても、コラーゲンも所詮はたんぱく質の一つ。消化されて細切れになりアミノ酸として吸収されます。
「吸収された後はコラーゲンにならないの?」→全く同じものにはなりません。
たんぱく質が消化されたあとにまた全く同じものに合成されるということはほぼないです。
むしろお肌に行くことはあまり考えられず、筋肉や血液の原材料になっていくでしょう。
ですので、コラーゲン自体を飲んでも悪いことは特にありません。しかし、今の段階ではメリットといえるメリットも信ぴょう性に乏しいものが多いです。まぁ栄養としてはたんぱく質がとれますしいいと思います。煮凝りおいしいですしね。
しかし、今後の医学の発展により、より直接的にお肌をきれいするコラーゲンが見出されるかもしれませんよ!ぜひ期待!
普段、お肌プルプル効果を宣伝文句とされてるコラーゲン。
実は身体の中でも良いことも悪いこともいろいろなことをしているんですね。
今後もコラーゲンについての研究がすすんでくことを期待しましょう。
以上、お肌のケアにはしっかり(?)気をつかっているかづきちでした!
次回→【tubu.27】くましゃんのあかぎれ体験談【簡単手荒れ対策】
参考文献
組織病理アトラス 第6版 p46~p47 p148~p149 文光堂 小田 義直 編
外科病理学 第4版 p57 文光堂 向井 清 編
参考URL
明治大学科学コミュニケーション研究所
http://www.sciencecomlabo.jp/h