【tubu.26】研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」〜免疫編⑤〜【ヘルパーT細胞の役割】
26.研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」~免疫編⑤~
前回→【tubu.25】研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」~免疫編④~【獲得免疫】
( @∀@)
みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。
BDFシリーズ第5弾です。
前回の雰囲気でわかる医学講座では、獲得免疫の隊員たちについて紹介しました。
さて、この隊員たちがどのように連携し、からだを守っているのでしょう?
また、自然免疫との連絡はどうなっているのでしょうか?
今回は、ヘルパーT細胞を中心としたからだ防衛軍BDF(=免疫全体)の連絡方法を紹介します!
今回の内容がわかれば「エイズ(後天性免疫不全症候群)でなぜ感染症にかかりやすくなるのか?」もよくわかります!
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自然免疫からの連絡
自然免疫は、外からの病原体を自ら攻撃しに行きます。
しかし、あまりにも数が多い、自分たちが弱っている、そのような状況では、自然免疫のみで敵を倒すことができません…。
自然免疫の隊員たちがそう判断した時、獲得免疫に敵の情報を伝達しなくてはなりません。
そこで、敵の情報を伝達する使命を担うのが、樹状細胞です!
樹状細胞はからだ中に張り巡らされたリンパ管を通って、敵の情報をリンパ節に運びます。
リンパ節はその名の通り、T細胞とB細胞がひしめき合っています。
リンパ節にはナイーブT細胞たちの集まりがあります。
そのナイーブT細胞たちの中で、樹状細胞は情報をぴらぴらとかざします。
すると、ナイーブT細胞の中で、この情報をぴったりと握れる手を持った細胞がよってきます。
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ヘルパーT細胞の誕生・増殖
情報にぴったりとくっつくことができるナイーブT細胞。
このナイーブT細胞は、活性化されヘルパーT細胞に変身します!
ここで初めて、病気に対する「司令官」ヘルパーT細胞が生まれるのです。
ただ、司令官は一人では足りません。
感染症と戦うためには、司令官のクローンがたくさん必要です。
そこで、ヘルパーT細胞は増殖します。
そういえば、風邪をひいたりのどが腫れたりすると、あごの下や耳の下が腫れたりしますよね。あれは、リンパ節の中でリンパ球が増えているからなんです!
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免疫全体の司令官:ヘルパーT細胞
ヘルパーT細胞は、司令官として獲得免疫の隊員たちに指令を出します。
細胞障害性T細胞やB細胞に、仕事をするように命令します。
特にB細胞・形質細胞には抗体をたくさん作り出すように促します。
これによって、からだの中に入り込んだ敵に強力な攻撃をお見舞いできるのです。
さらにヘルパーT細胞は獲得免疫の隊員だけでなく、自然免疫の隊員であるマクロファージにも指令を出します。
マクロファージは敵を食べます。
そこでヘルパーT細胞はマクロファージの中の敵が効率的に消化されるようにマクロファージに働きかけます。
これによって、マクロファージの消化スピードが上がります。
このように、ヘルパーT細胞の働きでからだ防衛軍ことBDFは効率よく、かつ強力に敵を攻撃することができます。
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司令官だからこそ狙われる!?
司令官としてBDFをまとめる、ヘルパーT細胞。しかし、どんな組織もトップを狙われたらもろくなります。免疫系統もそのうちの一つです。
エイズ(後天性免疫不全症候群)では、ウイルスがこのヘルパーT細胞を乗っ取ってしまい、ヘルパーT細胞が働かなくなってしまいます。すると獲得免疫が弱まってしまうのです。
司令官からの指示が届かなくなり、次第にBDFは崩壊していきます…。
エイズでは感染症にかかりやすくなったり、悪化しやすくなったりするのもうなずけますね。
機能すれば、免疫が強くなり、逆に働かなければ免疫が弱くなってしまう。ヘルパーT細胞って重要ですね!
今回はヘルパーT細胞を中心とした流れはなんとなくご理解いただけましたか?
ここまでわかれば、医学の基礎の重要な部分を学べているはずです!
この基礎を身につければ、医師でなくても、医学生でなくても、色々な病気への理解がきっと深まることでしょう!(それはまたいつかお話ししますね!)
ところで…
そういえば、抗体の働きって紹介していませんでしたよね…。
一体全体、抗体って何をしているのでしょう?
強力な武器と書いてありますが、補体と何が違うのでしょうか?
次回は抗体を詳しく見ていきましょう!
次回→【tubu.29】研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」〜免疫編⑥〜【抗体について】
参考文献
エッセンシャル免疫学 第2版 メディカルサイエンスインターナショナル 笹月健彦 監訳
参考URL
株式会社 医学生物学研究所 自然免疫と獲得免疫
http://ruo.mbl.co.jp/bio/product/allergy-Immunology/article/Natural-immunity-Acquid-immunity.html