【tubu.29】研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」〜免疫編⑥〜【抗体について】

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29.研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」~免疫編⑥~




前回→【tubu.26】研修医・医学生のための「雰囲気でわかる医学講座」〜免疫編⑤〜【ヘルパーT細胞の役割】

 

( @∀@)

みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。

 

前回の免疫では、獲得免疫「司令官」ヘルパーT細胞について話をしました。

 

今回は、その獲得免疫の重要な武器、抗体に焦点を当ててお話ししたいと思います。




  1. 抗体とはなにもの?

    抗体とは、ちょっと特別な腕を持つタンパク質です。

     

    好中球やリンパ球などの白血球細胞性免疫と言われるのに対し、抗体は別名液性免疫と言われています。

     

    何が「液」なのかさっぱりと思う方も多いはず。(ついこの間まで私も意味がわからないと思っていました。)

     

    実は抗体は、血液・リンパの中で初めて見つかりました。そこで、体液の中にあるから「液性免疫と名付けられました。

     

  2. 抗体は「さすまた」

    さて、血液やリンパの中に漂っている抗体ですが、教科書ではY字型に描かれることが多いです。

     

    まるで、「さすまた」

    そう、抗体は「さすまた」と思ってもらえればOKです。

    さすまたが悪人を撃退する武器であるように、抗体もまた敵を抑える武器なのです。

     

  3. 抗体のバリエーション

    抗体のイメージはさすまたですが、ちょっと特殊なんです。

    先端が敵に応じて変えられる仕組みです。

    どんな敵がやってきてもいいように、先端は無限に作り変えることができます。

    また、敵の侵入経路や、敵が侵入してからの時間など、様々なシチュエーションによってさすまたの持ち手の部分が変わります。

     

    抗体免疫グロブリンとも言います)にはIgGIgAIgMIgEなどがありますが、これはさすまたの持ち手部分の種類がいくつかあるよということなんです。まぁ簡単。

  4. 抗体は強力な武器

    抗体はさすまたのように敵にくっつき囲うことができます。

     

    その抗体の主な役割2つです!

    ・毒を中和する

    ・敵を食べてもらいやすくする(オプソニン化)

     

  5. 抗体は毒を中和する

    血液の中に病原体が侵入してきたとします。病原体の中には、人体にとって毒をばらまく悪党がいます。

    そんな奴が細胞の中に侵入してはたまりません。

     

    そこでさすまたこと抗体の登場です。

    毒にペタペタペタとくっつき、取り囲んでしまいます。

    これによって毒は身動きできなくなってしまいます。

    こうして人体に毒が入っても、抗体がさすまたとして働き、毒を取り押さえてくれるのです。(中和




  6. 「さすまた」というふりかけ

    病原体が大きかったりすると、さすまただけでは対抗できません。

    そこで、マクロファージなどの細胞性免疫の力を借ります。

     

    抗体はさらに敵にくっつくことで、敵の存在をマクロファージなどの食細胞にアピールします

    すると、マクロファージがすぐに見つけてパクパクと食べてくれます。まるでふりかけみたいです。

    さらに抗体は補体とも連携します。

    敵に抗体(特にIgG)がくっつくとき、補体の古典経路が活性化されます。これによってC3が敵にくっつきます。(tubu.23参照

    抗体と補体の連携によりますますマクロファージが食べやすくなります

  7. どうやって量産している?

    B細胞・形質細胞は、どんな敵でも対応できるように、設計図のパーツが大量に用意されています。

    そのパーツを選び組み合わせて、オーダーメイドの先端を作るのです。

     

    さすまたの持ち手は、基本的に共通で、先を変化させることだけで何にでも対応できるという優れものなのです。

    抗体って実はすごい!

     

    でも、さすまた工場であるB細胞と形質細胞はそんなに器用ではありません。

    残念ながら一つのさすまた工場(1つのB細胞もしくは形質細胞)では、一種類のさすまたしか作れません。

    また、一つの工場(1つの細胞)では作れる抗体の量も限られてしまいます。そのため、さすまた工場であるB細胞を増やし、さらに大量生産工場である形質細胞を増やすのです。

    さすまた工場のチェーン店舗が拡大するイメージでしょうか笑

  8. 抗体の種類と使い分け。

    抗体はシチュエーションによって使い分けられます。まさにBDFの武器と言えますね。

    IgM

    体の中に入ってきた敵をまず倒しに行きます真(M)っ先に倒すのでIgM

    先発隊なのでとにかく敵の数をなんとかしなくてはいけません。それで、さすまたが5つも合体している形のIgMが先発隊になるのです。

     

    IgG

    IgGIgMに遅れて動き出します。しかし、強力に敵を捉えることができ、最強の迎撃部隊と言えます。

    迎(G)撃するからIgG

    また、一度入ってきた敵にはIgGが準備されているので、次に敵がはいってきたときにはIgGですぐに迎え撃つことができます。これぞまさに迎撃のIgG

     

    IgA

    皮膚と比べて口の中などの粘膜はとても弱く傷つきやすいです。そのため敵も入ってきやすい

    そんな時に、粘膜で働くのがIgA

    表面の浅(A)い部分で働くからIgAと覚えましょう!

     

    IgE

    例えばスギ花粉。本来なら、敵ではないのですが、間違って敵と認識され花粉症を引き起こすことがあります。

    この花粉症の原因になってしまう抗体がIgE本来は寄生虫などに対して働くのですが、衛生環境が良くなった日本では余計なことをしています。

    エラー(E)を起こしているので、IgEですね笑。

     

    IgD

    体の中には少量しかいません。働きも良くわかっていません。

    ぶっちゃけ覚えなくてもいいので、どーでもいい(DIgD(免疫学の先生ごめんなさい)

    ・・・ということにしておきましょう。

     


と、いうことで免疫の基礎が一応終わりましたけどいかがでしたか?

私自身、勉強になりました。

その反面「はぁ~、免疫って教えるの難しいわぁ~」とも実感しました…笑。

 

今回で、免疫編はいったん終わりにしようと思います。

PD-1など、これより詳しい内容はまたどこかでお話ししましょう。

 

最後に一言

BodyDefenseForceはいつでも君を待っているよ!」

 

次回→【tubu.28】親になるなら知っておきたい2【風疹ってどんな病気?編】

 

参考文献

エッセンシャル免疫学 第2版 メディカルサイエンスインターナショナル 笹月健彦 監訳

参考URL

株式会社 医学生物学研究所 自然免疫と獲得免疫

http://ruo.mbl.co.jp/bio/product/allergy-Immunology/article/Natural-immunity-Acquid-immunity.html

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