【tubu.33】みんな知ってる、だけど意外と知らない「がん」のあれこれ②【がん?癌?ガン?】
33.みんな知ってる、だけど意外と知らない「がん」のあれこれ②~がん?癌?ガン?~
前回→【tubu.32】みんな知ってる、だけど意外と知らない「がん」のあれこれ①【がんって何?】
( @∀@)
みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。
前回のつぶやきでは、「がんとはコピーに失敗した細胞」というお話ししました。
そういえば、がんというと…悪性腫瘍、悪性新生物と言われることがあったり…
がんを「がん」とひらがなで表記したり、「癌」と漢字で表記したり、いろいろです。
なんで「がん」という言葉はこんなに色々あるのでしょう…
実は、これらの似たような言葉はそれぞれ意味が違うのです!
今回は、この「がん」と似ている言葉のそれぞれの意味の違いについて、考えてみましょう!
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「腫瘍」≠「がん」
腫瘍とは一体なんでしょうか。ドラマで、「〇〇に腫瘍があります」とかセリフを聞くことがあります。
腫瘍というと、がんの事を想像しがちですが、そうではありません。
腫瘍とは、「余計な細胞の集まり、塊」です。
正常な細胞でも悪いがん細胞でも、増えすぎると迷惑です。
例えば、脂肪腫と呼ばれるものがあります。皮膚の下に脂肪細胞の塊ができてしまうものですが、これは悪いものでしょうか?
いいえ、これは正常の細胞が増えただけで、がん細胞のように自分勝手に動き、他臓器に迷惑をかけるわけではありません。
このような細胞の塊を「良性腫瘍」と言います。
一方、がん細胞のように無秩序な悪いやつが塊をなすと「悪性腫瘍」と言われます。
一言に腫瘍といっても、この二種類があるので、必ずしも「腫瘍」=「がん」ではありません。
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「がん」と「癌」の違い
がん対策基本法とか、一般的ながん検診で書かれるものは、ひらがなの「がん」です。
一方、胃癌、肺癌、肝臓癌などは漢字の「癌」で表記されます。
医学部で扱うがんは「癌」と表記されるものが多いのですが…
「癌」という漢字が難しいからひらがなで「がん」と書くのでしょうか?
いいえ、違います!!!
実は「がん」と「癌」には大きく違うのです!
この話をする前に、からだの細胞の種類について簡単に考えましょう。
私たちのからだは、外部のものにさらされています。
そこで、からだの外側に面した細胞が内側を守っています。
例えば、皮膚、口の中、食べ物が入る胃や腸の中など、これはからだの外側にあたります。
人間のからだはチューブみたいになっていると考えてください。
皮膚、口の中、胃・腸などのチューブの壁を作る細胞は、「上皮細胞」と言われます。
これらは、細胞たちがしっかりとくっつく事で、外から変なものが侵入してこないようになっています。
一方で、からだの中には筋肉を作る細胞、神経を作る細胞、脂肪を蓄える細胞、BDF隊員(免疫を担う細胞)、赤血球、白血球など色々な細胞がいます。これらをまとめると「非上皮細胞」とも言えます。
以上、「上皮細胞」と「非上皮細胞」の二つから私たちのからだはできています。
私たちが、「がん」と書くのはこれらすべての細胞からできたがんの事です。
一方、「癌」と書くのは、上皮細胞からなるがんの事です。
がん対策基本法やがん検診は、すべての悪い細胞のことを指すのでひらがなの「がん」で表記されます。
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悪性新生物って何?
「悪性新生物」=「がん」です。
「新生物って何?」その名の通り、がん細胞は自分の細胞から生まれてきた新たな生き物です。
だから新生物。そのまんまです。
では「悪性新生物と悪性腫瘍との違いは何???分ける理由は?」と思うかもしれません。
ここで、思い出したいのは「腫瘍」の定義です。
「腫瘍とは余計な細胞の塊」ということは塊しか含みません。
白血病などの血液の「がん」は、がん細胞が血液中にばらまかれます。
このため、基本的に塊は作りません。
したがって、血液の「がん」は「腫瘍」とは言えないのです。
悪性新生物は、悪性腫瘍とは意味が異なります!注意が必要です。
このように、「がん」に関連する言葉はたくさんありますが、少しずつ意味が違います。
「がん」をいろいろなところで見かけるようになったこの高齢社会だからこそ、皆さんにぜひ知っておいて欲しい知識です!
もし、テレビやネットでこのような単語を見かけたら、「ふふふ、意味が違うんだった」と思い出していただけたら嬉しいです!
次回→【tubu.34】働き始めの人はご用心!給料や税金にはご注意を【給与明細保存大事】
参考文献
こわいもの知らずの病理学講義 晶文社 仲野徹
エッセンシャル免疫学 メディカルサイエンスインターナショナル 笹月健彦 監訳