【tubu.38】かかっちゃうと大変!破傷風の治療【予防接種は大事】
もくじ!
38.かかっちゃうと大変!破傷風の治療
前回→【tubu.37】見かけないけど意外とコワイ「破傷風」【いつでもどこでも】
( @∀@)
みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。
前回、釘を踏み抜くと破傷風になることがあるという話の中で、破傷風は怖い病気というお話をしました。
致死率も高く、現在でも発症すれば20〜50%の患者さんが亡くなる病気です。
さて、こんな怖い破傷風ですが治療法はあるのでしょうか?
今日は、破傷風の治療を見ていきましょう。
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疑いがあるなら抗毒素!傷口の洗浄!
動物に噛まれた、人に噛まれた、錆びた釘を踏み抜いた…などなど、破傷風を発症してしまうリスクが高い状況があります。
そんな時は発症を予防するために、抗破傷風免疫グロブリン(TIG)を投与します。
つまり、毒素にくっつく抗体です。(tubu.29 を参照)
破傷風の毒素は、神経に入る前に血中を漂っています。そこで、それらの毒素が神経に入って悪さをする前に、抗体をくっつけて毒素の力を弱めようとします。
また、傷口にいる破傷風菌を洗い流すことも大切です。(創洗浄・デブリードマン)
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発症してしまったらどうするの?
破傷風を発症してしまったら、身体中の筋肉が痙攣したり、呼吸筋が痙攣して、大変なことになります。
発症したらどのような治療をすればいいのでしょう?
①原因を取り除こう!
これ以上毒素が神経に影響を与えないように、抗破傷風免疫グロブリンを投与します。これで毒素の力を弱めましょう。
破傷風の発症、重症化は、傷にいる破傷風菌が増えて毒素をバンバン作ることが原因となります。
そこで抗菌薬(ペニシリンG)で破傷風菌を撃退しましょう。
また、予防の時と同様に傷はしっかり洗浄します!
しかし、一度毒素が神経に作用して痙攣が起き始めると、破傷風菌を除去しても、抗菌薬を投与しても痙攣は治りません。どうしたらいいのでしょう。
②痙攣をどうにかしよう…対症療法
全身痙攣が起きると、全身の筋肉がつったようになります。そんな時は、抗痙攣薬(ジアゼパム)を投与します。
また、破傷風の患者さんは、光や音などの刺激で痙攣を起こすことがあります。
静かで暗い部屋に、入院していただきましょう。
時には、患者さんを落ち着かせるために、鎮静薬を使うこともあります。
また、痙攣で呼吸筋がうまく動かなくなり、呼吸困難になってしまうことが…。
さらに、破傷風になると気管の中に痰がたくさん分泌されて詰まりやすくなります。
呼吸が止まってしまうこともあるのです。
その場合は、口からチューブを入れ、人工的に呼吸を管理します。(気管挿管)
③血圧や心臓の動きをチェック!
破傷風の毒素は、自律神経も侵します。するとどうでしょう。
血圧が上がったり、下がったり、脈が速くなったりなど、心臓に負担がかかってしまいます。
特に重症の破傷風の場合、血圧の管理は非常に難しくなってしまいます。
時に、心臓に負担がかかり、心臓が止まってしまうことも…。
このような場合は、鎮静薬や心血管系に直接働くお薬を使って、血圧の乱高下を抑えます。
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破傷風は治るの?
破傷風はきちんと治療を受け、呼吸管理や血行動態がきちんと管理されれば、治ることが見込めます。
完全回復も見込めます。
しかし、治療期間が長くなってしまうことがあり、それに伴い、治療に関連した合併症を起こすことがあります。
例えば、痙攣を抑えるために抗痙攣薬を使いますが、血管内に何度も抗痙攣薬を入れることで、血管が傷つくことがあります。(血栓性静脈炎)
呼吸管理のために口からチューブを入れた場合、そこで菌が繁殖し、時に肺炎を起こすことがあります。(人工呼吸器関連肺炎)
また、口が開けれないと、太い静脈に点滴を行い、栄養や薬をそこから流します。(中心静脈カテーテル)
長期にわたってこの点滴の針を入れておくと、点滴の針に細菌がくっついて感染症を起こします。
このような治療関連の合併症だけでなく、痙攣で呼吸が困難になることにより、脳に酸素がいかず低酸素脳症になることもあります。
破傷風の治療は時間がかかってしまうことがあるので、合併症が起きてもおかしくありません。
しかし、このような合併症がなければ、破傷風は完全回復も見込める病気なのです。
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意外と知らない破傷風の豆知識!
破傷風は感染症。そうであれば、一度かかったら免疫が働いてくれそうと思いますよね。
一般的に、麻疹や風疹は一度かかると免疫ができます。だから、一度かかると二度とかからないと言われます。(終生免疫)
しかし、残念ながら、破傷風の場合は発症しても、免疫ができません。
そのため、破傷風になった後に必ずワクチンを打つ必要があるのです。
また、今回は、全身の筋肉が痙攣してしまう重症の破傷風を例に治療法を考えましたが、実は発見されにくい破傷風もあります。
高齢者が物が食べにくくなったという症状で病院にやってきました。
すると実は破傷風だったということがあります。
破傷風には、非常にゆっくりした経過で発症し、症状が軽いものもあります。
注意しましょう!
以上、前回から2回にわたって、出会わないけれど意外と身近な破傷風についてお話ししました。
結構怖い病気ということがお分かりいただけましたか?
日本では、ワクチンを接種できるので、きちんとワクチンを打ってしっかり予防したいですね。
それでは、また次回お会いしましょう!
次回→【tubu.39】冬に流行するインフルエンザ、一体何者?【パンデミック】
破傷風とは? 国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/466-tetanis-info.html
FORTH 厚生労働省検疫所 海外渡航のためのワクチンhttps://www.forth.go.jp/useful/vaccination.html