【tubu.39】冬に流行するインフルエンザ、一体何者?【パンデミック】
39.冬に流行するインフルエンザ、一体何者?
前回→【tubu.38】かかっちゃうと大変!破傷風の治療【予防接種は大事】
( @∀@)
みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。
今日は私が、医師国家試験を受けた後になった病気についてお話しします。
現在の医師国家試験は、2月の中旬くらいに、2日間にわたって行われます。
しかし、私が受けた医師国家試験は今とは違い3日間でした。
毎日毎日、100分前後の試験が3つもあり、体力勝負でした。
しかも、3日目が最も試験時間も長く、問題量も多い…まさに拷問のような試験でした。
あまりにも長い時間、座って試験を受けるため、背中とお尻が痛かった記憶があります。
さて、ようやく医師国家試験が終わり、やっと一息できるかと思った時…私は思わぬ病気に襲われました。
その名も、インフルエンザ…。
その年はしっかり、ワクチンも受けていましたし、マスクも常備!
もちろん、手洗い・うがいは完璧にしていました。
それでも、インフルエンザになってしまいました。
びっくり!やはり国家試験で体力が落ちていたのでしょうか…。
後から聞いた話ですが、この時、同級生が他に何人もインフルエンザになっていたそうです。
もしかして、国家試験の会場でうつされたのかしら…。
今年もすでに、インフルエンザで学級閉鎖が出たと聞いています。
これからやってくるインフルエンザのシーズンに備えて、一緒にインフルエンザについて学びましょう!
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インフルエンザって何?
インフルエンザは、風邪と同じ様にのどからやってくる感染症です。
しかし、風邪と大きく違う点があります。
それは、風邪より重症化しやすいということ!!!
インフルエンザウィルスが、口やのどなどからからだの中に侵入することで、インフルエンザを引き起こします。
インフルエンザになると、最初は「風邪かな?」という様な、のどの痛み、鼻水が出現します。
加えて、38℃以上の高熱が出たり、関節が痛くなったり、筋肉痛を感じたりします。
からだの中で激しい炎症が起きるから、高熱が出たり、いろいろなところが痛く感じてしまうのです。
元気な人はだいたい1週間ほどで治りますが、人によっては悪化してしまうこともある危険な病気です。
例えば、高齢者の場合は肺炎を合併してしまい、なくなることもあります。
また、インフルエンザ脳症や脳炎、Reye症候群(らいしょうこうぐん)など、怖い合併症もあるので注意が必要です。
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「流行」するから「インフルエンザ」
毎年、冬になるとインフルエンザが流行し、たくさんの学校で学級閉鎖が起きます。
テレビでも、毎日、「〇〇中学校で学級閉鎖」、「××小学校で何人のインフルエンザ患者が出た」などのニュースが流れます。
インフルエンザは、ウィルスが人間の唾液や鼻水の中に入り、会話やくしゃみ・咳によって撒き散らされます。(飛沫感染)
だから、学校や職場など、人が密集しているところではインフルエンザにかかりやすくなります。
実は、20世紀にインフルエンザが世界的に大流行したことが何度かあります。(パンデミックと言われます)
1918年にはスペインかぜと言われ、大流行しました。この時の死者は世界中で数千万人から1億人と言われています。
当時は第一次世界大戦中でした。実は第一次世界大戦による戦闘自体よりも、兵士の間で流行ったスペインかぜがたくさんの人を殺したと言われています。
1957年にはアジアかぜ、1968年の香港かぜ、1977年のソ連かぜ、そして2009年の大流行…この様にインフルエンザはしばしば大流行を起こしています。
余談ですが、インフルエンザの語源は、イタリア語の「influenza(影響・感化)」という言葉だそうです。
名は体を表すという様に、インフルエンザの名前も的を射ていますね!
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インフルエンザはフレキシブル!
ではなぜ、毎年毎年、インフルエンザが流行するのでしょう?そして、時に大流行を起こすのでしょう。
その理由は、インフルエンザウィルスに隠されています。
インフルエンザウィルスは、図の様にエンベロープというものに、設計図であるRNAが包まれた簡単な構造をしています。
この構造の違いから、インフルエンザウィルスはA型、B型、C型に分けられています。
今回は、特に流行しやすいA型の紹介をします。
A型インフルエンザウィルスのエンベロープには、赤血球凝集素(H)と、ノイラミニダーゼ(N)というものが飛び出しています。
この飛び出た2つの突起を巧みに使って、私たちのからだの細胞を出入りします。
私たちの免疫は、このHとNに対して抗体を作り、インフルエンザを撃退します。
よくニュースで「インフルエンザH1N1」とか「H5N1」などと耳にすると思いますが、これはインフルエンザの表面の突起物の種類のことを指しているのです。
実は、これら2つの突起物は、変形しやすいという特徴があります。(この変形を「変異」と言います)
インフルエンザは、この突起物を少しずつ変形させ、私たちの免疫から逃れます。そして、まんまとからだの中に侵入し、悪さをするのです。
しかも、タチが悪いことに毎年毎年、マイナーチェンジをします。
インフルエンザウィルスが新しい形に変形すると、人間の免疫はついていけません。
そのため、毎年毎年、インフルエンザが流行してしまうのです。
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インフルエンザウィルスは凶悪になり得る!?
実は、インフルエンザウィルスは変形しやすいのが特徴です。
ウィルスは毎年、少しずつマイナーチェンジをしているのですが…ある時とんでもない変身を遂げることがあります。
これによって、ウィルスに感染しやすくなり、時にウィルスが凶暴になることがあるのです。(強毒化)
例えばスペインかぜは、H1N1のウィルスが突然、強毒になったために、世界的大流行を引き起こしたと言われています。
2009年には新型インフルエンザと言われ、騒がれたことも記憶に新しいのではないでしょうか?
あの新型の意味は「HとNが変形して新しいものができた」という意味なのです。
この様にインフルエンザウィルスはコロコロと形を変えるために、感染しやすく、時に世界的大流行を引き起こすのです。
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インフルエンザは動物界でも大流行!
インフルエンザが流行しやすい・形を変えやすい原因は他にもあります。それはインフルエンザが動物にも感染すること!
鳥インフルエンザや豚インフルエンザという名前ように、人間だけでなく、他の動物にも感染します(人獣共通感染症)。
特に、カモはいろいろな種類のA型インフルエンザウィルスを隠し持っています。人間だけでなく、アザラシやクジラ、ミンク、馬などに感染することができるA型ウィルスもいます。
カモの体内で、時に人間に感染する能力のなかったインフルエンザウィルスが形を変えます。その形を変えたインフルエンザウィルスが、人間に感染することがあります。
元々感染するはずのないウイルスの感染、からだのなかに対応策なんてあるはずありません…。
人間のからだのなかで好き放題暴れては増え、暴れては増え…。
そしてその中で、ついに人間から人間に感染する能力を手に入れてしまいます…。
そうなってしまえば最後、爆発的に広がりうることも…怖い怖い。
また、タチが悪いことに、鳥はその場でじっとしていてはくれません。
特に渡り鳥は、越冬のため色々なところに渡ります。すると…世界各地にウィルスを広げてしまうのです。
そういえば日本でも、散発的に鳥インフルエンザが現れ、養鶏場の鶏を処分するという事態が発生していますが、あれも渡り鳥が原因だと考えられています。
今回は、インフルエンザがなぜ流行しやすいのかということを中心にお話ししました。
インフルエンザって変身しやすいウィルスなんですね…。
次回のつぶやきでは、インフルエンザの治療や合併症、予防についてお話しします。