【tubu.46】うつ病体験記~デイケアの重要性~【精神科デイケア】
46.うつ病体験記~デイケアの重要性~
前回→【tubu.45】最近の医師国家試験の問題を解いてみた②【爆傷ってなに?】
( @∀@)
みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。
今回は、tubu.10以来のうつ病についてです。
今までは、うつ病の症状や治療について説明しましたが、今回は「デイケア」についてです。
デイケアというものに馴染みのない方が多いと思いますが、一体どんなものでしょうか?
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「デイケア=高齢者がするもの」???
デイケアってなんだろう…。
デイケアというと…。
よく高齢者の方が、デイケアに通い、リハビリや訓練など受けていることをなんとなくご存知の方が多いと思います。
デイケアは、利用者がからだの機能を維持・回復し、認知機能の維持・改善することを目的として行われています。
実は、デイケアは高齢者だけが行うものではありません!
精神科領域にもデイケアというものがあり、うつ病や統合失調症などの精神科に通っている人が対象です。
工作・塗り絵をしたり、本を読んだり、みんなでレクリエーションをしたりなど、いろいろなことをします。
普段、私たちが生活の中で何気なくしていることを、リハビリテーションの一環として取り入れています。
デイケアでは、このようなリハビリを行うことで社会復帰の足がかりになることも目標としています。
私が医学生の時、このデイケアのことを学び、重要性を知りました。ただ、大切だということは頭ではわかるのですが、いまいち実感ができませんでした。
本を読んでみたり、料理を作ってみたり…私たちが普段の生活で、何気なくしていることをする意味はどこにあるのだろうか…。
しかし、自分がうつ病になってその大切さを身にしみて感じました。
今回は、私の体験と、私が精神科病院の看護師さんから聞いたお話からデイケアの大切さに迫ります。
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自分がうつ病になって感じたこと
私がうつ病になった時、初めは全く体が動きませんでした。
常に、ベッドの上で天井と見つめ合うだけの毎日でした。
しかし、十分に休養をとり、お薬による治療が進むとだんだんと体を動かせるようになってきます。
でも、何をしてもすぐエネルギーが切れて、ベッドに逆戻り…。
外に出ることもままならず、家の中でベッドにこもり続ける生活が続きました。
そしてようやくエネルギーがちょっと回復してきた時、ふと気がつきました。
お外に出るのが怖い…
家事をしようにもからだが思うように動かない…
本を読んでみようにも、文字が目に入ってこない…など
なんということでしょう、いろいろなことができなくなっていることに気がつきました。
何かしようとするたびに「またエネルギー切れを起こしてきつくなったらどうしよう」という不安を覚えました。
このままでは、社会復帰に差し支えると、恐怖も感じました。
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デイケアの重要性
恐怖を感じつつも、このまま何もしないわけにはいかないなと思った私。
とりあえず、目についた本を手に取ったり、好きだった切り絵を再開してみることにしました。
最初は、短時間しかできなかったり、文字が目に入ってこなかったりと、あまりうまく行きませんでした。
しかし、毎日継続するうちに、少しづつ前のようにできるようになっていきました。
結局、私は、デイケアに通わなかったのですが、自分で少しずつデイケアのようなリハビリを行い、回復していきました。
気がつくと、外出もできるようになっていました。
その時、医学生時代の疑問がふと頭によぎりました。
「精神科のデイケアの重要性がいまいち実感できないなぁ。頭では大切ってわかるんだけど…」
実際、自分がうつ病になってみると、元気な時は苦もなくできていたことが、全くできなくなりました。しかし、毎日少しずつトライすることで、できることも増え、前向きになっていきました。
ああ、そうか、デイケアの大切さってこういうことだったんだ…。
私のように病気でしばらく活動を休止していた人が、できることを増やし、自信を取り戻していくために、精神科のデイケアがあるのだということを身をもって感じることができました。
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精神科病院でのデイケア
私が通っている精神科病院の看護師さんとお話する機会がありました。
その時に、面白いデイケアの話を聞いたのでご紹介しようと思います。
私の通っている病院は、外来治療中の患者さんを対象に、精神科デイケアを行なっています。
このデイケアに少し工夫があるそうです。
普通デイケアというと、レクリエーションをしたり、みんなで歌を歌ったり、料理をしたりなどが思い浮かぶのですが…
この病院では、デイケアを行う時に気をつけていることがあるそうです。
「その人の生活に根付いた活動をする」
どんな患者さんにも、今までの自分なりの色々な体験をしてきています。この病院では、デイケアを行う際に、この体験を取り入れることにしました。
例えば…
毎年漬物を漬けている患者さんには、デイケアの一環で漬物を作ってもらう。
季節ごとに、野菜を植えて育ててきた患者さんには、病院の畑で野菜を育ててもらう。
などなど…。
この取り組みで、精神的に回復する患者さんもいるそうです。また、認知症の悪化も明らかに防げているそうです。
なんとデイケアだけで、引きこもりから回復した例もあるそうです。びっくり…
確かに、私が自分でリハビリをしているときに、昔やったことはからだが意外と覚えていることに気がつきました。そして勝手にからだが動くのです。私の場合、気がついたら切り絵ができていたことが度々あありました。
昔やっていたことが再びできると、自信につながります。前向きにもなれます。
病気の患者さんや、認知症の患者さんも、昔できたことがデイケアでできると、自信につながるのではないでしょうか?
きっと、その自信が病の回復や、悪化の防止につながっているのでしょう。
私は、病気になって色々なことができなくなりました。
そして同時に自信をなくしました。人からできないことを責められたこともありました。
病気になるとできないことばかりに目がいきがちです。
以前の「できる自分」とどうしても比較ばかりしてしまいます。
しかし、デイケアは私たちにできることを気がつかせてくれます。
そして、ほんのちょっとした取り組みだけで、少しずつ自信を取り戻すことができます。
医学生時代、いまいちデイケアの重要性を実感できなかった私ですが、病気をして大きく変わりました。
辛いこともたくさんありましたが、今では、なんと病気をしてよかったと思うようになりました。
もしあなたが病気になって色々なことに自信をなくした時、ちょっとデイケアのことを思い出してみてください。何かが変わるかもしれませんね。
次回→【tubu.47】「市政だより」を読んでみた【検診、救急】