【tubu.51】知ってるようで知らないボツリヌス①【ハチミツくまさん】
51.知ってるようで知らないボツリヌス①
前回→【tubu.50】なぜフグ毒は怖いのか?【テトロドトキシン】
( @∀@)
みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。
前回は、テトロドトキシンという強力なフグ毒の話をしました。
神経に効き、筋肉が動かなくなってしまう毒として、フグ毒の他にボツリヌスも有名です。
ボツリヌスというと…、辛子レンコンやいずし、ハチミツに入っていたことで、問題になったことがあります。
今回は、意外と身近なボツリヌスについてお話しします。
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ボツリヌスって菌のすごいところ
ボツリヌスというのは細菌の名前です。そのボツリヌス菌が作るのがボツリヌス毒素です。
意外なことに、ボツリヌス菌はあの破傷風菌と同じ属に分類されています。(tubu.37)
その名前も、クロストリジウム属!何だか字面はかっこいいですね。
しかし、このクロストリジウム属には問題児が多い!
またそれは、おいおいお話ししようと思います。
さて、破傷風菌とボツリヌス菌…同じ属というだけに、共通点があります。
特に2つ、大切なポイントがあります。
まず、どちらの菌も、酸素が嫌いです。酸素がない空間で、ぬくぬくと育ちます。
もう一点は「芽胞(がほう)」を作るということ!
芽胞とは、細菌が生き残るために行う、強化シールド付き休眠状態みたいなものです。
例えば、ボツリヌス菌が生きにくい環境になった時、ボツリヌス菌は芽胞を作ります。
芽胞の中では、代謝が止まり、菌は冬眠したような状態になります。
芽胞になれば、酸素が嫌いな菌でも、空気がある状態で生き残ることができます。
さらに、通常なら熱湯で死滅していた菌も、芽胞なら何と100℃に20分〜30分も耐えることができます!
芽胞の耐久力ってすごい!
そして、過酷な環境を生き抜いた芽胞は、自分に都合のいい環境にやってくると、元に戻って増殖を始めます。
このように、クロストリジウム属の菌は、生き残るための仕組みを持った、賢いヤツらなのです。
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問題は芽胞
辛子レンコンや、いずし、ハチミツでボツリヌスが問題になった理由は、この芽胞です!
例えば、もし真空パック入りの辛子レンコンを作るとき、レンコンに芽胞がくっついていたらどうでしょう?
芽胞は短時間の加熱滅菌はすり抜けることができます。
すると芽胞がくっついたまま、辛子レンコンは真空パックに保存されます。
真空パックの中は、もちろん空気はほぼありません。ボツリヌス菌は芽胞から元の姿に戻り、ぬくぬく増殖し始めます。
このときに毒素も作られます。
そして、食事の際に人の体の中に侵入し、毒をばらまくのです。
辛子レンコンの真空パック、いずしは特に空気が少ない状態に保存されるため、芽胞から菌が復活し毒素による中毒が起きるのです。
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ハチミツは赤ちゃんにはNG
ハチミツの中には、ボツリヌスの芽胞が入っていることがあります。
大人では、問題になりませんが、赤ちゃんの場合大問題が起きることがあります。
赤ちゃん(生後2週〜1年未満)が、ハチミツを食べると、一緒に芽胞が腸管の中に入ります。
芽胞は、赤ちゃんの腸管の中で、元に戻り増殖します。
そして、ボツリヌス毒素によって中毒になってしまいます。
中毒では、便秘になったり、お乳を吸う力や飲み込む力が弱くなったりします。また、眠りこけやすくなったり(嗜眠)、泣き声が弱くなったりすることも…。進行すると、呼吸が止まって死の原因になることもあります。
これを乳児ボツリヌス症と言います。
大人では、ハチミツの中の芽胞があまり問題になりません。むしろ、直接毒素を食べてしまうことがボツリヌス症の原因になります。
赤ちゃんは、芽胞が腸管に入って、菌自体が増えてしまうことが問題なのです。私が愛用している戸田新細菌学には、乳児ボツリヌス症は「ボツリヌス菌芽胞を含むハチミツが原因になった例がかなりある」と記されています。
だから、赤ちゃんにハチミツはNG!
乳児にハチミツを食べさせることは控えましょう!
次回は、ボツリヌス毒素の怖いお話です。
ハチミツ、辛子レンコン大好きなかづきちでした。
次回→【tubu.52】知ってるようで知らないボツリヌス②【ボツリヌス毒素は悪い奴?】
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参考文献
戸田新細菌学 改定33版 破傷風 p602〜p604 南山堂 編集 吉田眞一