【tubu.52】知ってるようで知らないボツリヌス②【ボツリヌス毒素は悪い奴?】

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52.知ってるようで知らないボツリヌス②




( @∀@)

みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。

 

前回は、ボツリヌス菌は実は破傷風の仲間、空気が嫌いで芽胞を作るというお話をしました。

しかし、肝心のボツリヌス毒素のお話をしていませんでした。

 

今回は、ボツリヌス菌が作るボツリヌス毒素の仕組みとその怖さを考えます!




  1. ボツリヌス毒素による症状

    もし、ボツリヌスの毒素が口から入ったとします。そのうちの一部が小腸に入り込み、消化酵素によって活性化し毒のパワーを増します。

    パワーを増した毒素は血中に入り、神経に作用して、筋肉の動きを邪魔します。

     

    この毒素のせいで、いろいろな症状が出現します。

    初期には、強い吐き気、嘔吐、めまいをきたします。

     

    そして、主に顔から上を担当する神経(脳神経)がやられます。

    脳神経が障害されると、まぶたが垂れ下がったり(眼瞼下垂)瞳孔が開いたり(散瞳)ものが二つに見えたり(複視)飲み込みが悪くなったり(嚥下障害)話しにくくなったり(構音障害)します。

     

    顔の筋肉から始まる症状は、次第に下へ下降していき、四肢脱力をきたします。

     

    さらに進行した場合は、呼吸筋が麻痺し、死亡することもあります。

    こんなに症状が重いにも関わらず、意識ははっきりしています。

     

    残念ながらボツリヌス毒素を完全に取り除く治療法はありません。

    呼吸筋が麻痺したら、人工呼吸器で管理したり、食事の代わりに血管内に栄養を流すことが必要です。

     

    ただ、体内に毒素が入った場合、ウマの抗毒素血清を使用し、症状を緩和を図ることがあります。

     

    毒素の症状が完全に治るためには、毒素で傷ついた神経・筋が完全に修復しなければなりません。

    そのため、毒素で一度麻痺の症状が出てしまうと、元に戻るためには数週から数ヶ月と長い時間がかかります。

     

    数ヶ月間、呼吸器をつけられたままかと思うとゾッとします。

     

    ボツリヌス毒素は、筋肉が動かなくなるだけではなく、一度なってしまうと治るまでにかなりの時間を要する怖い毒素なのです。

     

  2. ボツリヌス毒素は怖い

    内科学書の権威であるハリソン内科学にもボツリヌスの記述があるのかと思い調べてみると…

    何と「生物テロ」の枠にボツリヌスが記されていました。

     

    ページを開いてみて驚きました。

    旧日本軍の陸軍でもボツリヌス毒素の研究が行われていたり、米国や旧ソ連もボツリヌス毒素を生産していたと書かれていました。

     

    テロに使われるかもしれないと思うとゾッとします。

     

    ただ、ボツリヌス毒素は確かに怖いものではありますが、短時間で毒性が低下してしまうので、散布するのはなかなか難しいようです。

     

    ハリソンには何と、オウム真理教がボツリヌス毒素を散布しようとして失敗したという話まで載っていました。




  3. ボツリヌス毒素による症状は予防できるのか?

    過去に戦争に用いられる可能性もあったことを考えると、ふと「軍人さんはボツリヌス毒素を予防する手段を持っていそう」と思いますよね。

     

    実は、検査技師や軍人さんで普段からボツリヌス毒素にさらされる危険のある人は、ボツリヌス毒素のワクチンを打っているそうです(トキソイド)。

     

    ボツリヌス症は滅多にあるものではないので、残念ながらワクチンは一般的な予防法ではありません。

     

    しかし、ボツリヌス毒素はタンパク質のひとつなので、芽胞と違い熱に弱いのです

    そのため、食品を食べる前に加熱すれば、ボツリヌス毒素の一番の予防になります!

     

    やっぱり食中毒の一番の予防法は、「火を通すこと」ですね!(黄色ブドウ球菌の毒素を除く)

     

  4. 実はボツリヌス毒素による治療がある!

    「こんな怖いボツリヌス毒素を治療に使うことがあるのか?」

     

    実は、そんな突拍子もない治療法があります。

    その名も「ボツリヌス毒素製剤」。一般的には、商品名「ボトックス®」で知られています。

     

    ボツリヌスの毒(トキシン)をそのまま使います。もちろん、とても微量で使用します。

     

    どんな患者さんに使うかというと…

    意思とは関係なくて足の筋肉が緊張してしまっている患者さん(痙縮)顔面やまぶたの筋肉が痙攣している人などに使います。

    また、汗が止まらない人にも使われます(原発性腋下多汗症)

    他にも、美容整形でシワを取るために使用されることがあります。

     

    治療の時はボツリヌス毒素製剤を、効果が出て欲しい場所に、注射します。

    効果は、数ヶ月ほど続きます。

     

    しかし、痙攣は止まったとしても、効きすぎてまぶたが下がってきたり、注射した付近の筋肉が麻痺したり…などの副作用が出ることがあります。また、運が悪ければ、飲み込みが悪くなったり、呼吸に影響が出ることもあるそうです。

     

    特定の病気には有用とされている治療法ですが、やはり怖い毒を使ってるだけ注意が必要ですね。

     


以上、今回はボツリヌス毒素のいろいろなお話をしました。

テロにも使われかねない毒とはいえ、場合によっては薬にもなるのですね。

 

次回は、なぜボツリヌス毒素で筋肉が動かなくなるのか、その真相に迫ります。

 

 




参考文献

戸田新細菌学 改定33版 破傷風 p602〜p604  南山堂 編集 吉田眞一

ハリソン内科学 第5版

 

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