【tubu.55】抗菌薬で腸内細菌が入れ替わる???【菌交代現象】

いいねと思ったらシェア!

55.抗菌薬で腸内細菌が入れ替わる???




( @∀@)

みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。

 

20世紀に抗菌薬が登場し、色々な感染症に対応することができるようになりました。

 

しかし、抗菌薬が思わぬ事件を引き起こすことがあるのです。

 

それは、菌交代現象。

 

一体これはなんなのでしょう?

今回は、菌交代現象のうち、とても有名な偽膜性腸炎という病気を紹介します。




  1. 医師国家試験を読んでみよう

    さて、過去に医師国家試験にこんな問題が出題されました。

     

    65歳の男性.10日前から市中肺炎の治療のため入院中である。

    肺炎は第三世代セフェム系抗菌薬による治療で軽快し,3日前に投薬終了となった。

    2日前から下痢が出現し,昨日は下痢が10回以上認められた。

    腹部は平坦,軟で,圧痛を認めない。

    下部消化管内視鏡で大腸粘膜に、黄白色の半球状小隆起病変を認めた。

     

    *第106回医師国家試験A29 一部改変・簡略化

     

    この患者さんは、どうも肺炎で入院し治療したら、お腹を下したようです。

    治療にはセフェム系の抗菌薬が使われていました。

     

    一体、この患者さんに何が起きたのでしょう?

     

  2. 抗菌薬は腸内細菌もやっつけてしまう

    大腸には、たくさんの菌が住み着いています。

    中には消化を助けてくれたり、腸の調子を整えてくれたりする菌もいます。

    私たちのからだは、腸に住み着いている常在細菌たちによって支えられているのです。

     

    もちろん、抗菌薬は、悪さをしている菌を退治するために投与されます。

    しかし、抗菌薬は常在細菌もやっつけてしまうことがあるのです。

     

    もし、常在細菌の群れが大きなダメージを受けてしまうと、腸がバランスを崩します。

     

    この患者さんの場合、肺炎の原因菌を退治することにはうまくいったのですが、抗菌薬のせいで腸の常在細菌たちがダメージを受けてしまったようです。




  3. 菌交代現象

    さて、常在細菌が少なくなった腸では、思わぬやからが増殖し始めます。

    それが今回の主人公、クロストリジウム・ディフィシルClostridium difficileです。

     

    またまた、現れました!最近、つぶやきによく登場するクロストリジウム!

    ボツリヌス菌破傷風ウェルシュ菌と同じクロストリジウム属ですよ!

    破傷風tubu.37,tubu38ボツリヌス菌tubu.51,tubu.52,tubu.53ウェルシュ菌tubu.54

     

    クロストリジウム・ディフィシル、ここではかわいく、ディフィシルちゃんと呼ぶことにします。笑

    (あくまでDr.かづきちの独断と偏見によるネーミングです)

     

    さて、このディフィシルちゃん、実は正常な状態では、常在細菌に圧迫されて肩身がせまい思いをしています。

     

    しかし、抗菌薬で常在細菌たちがダウンすると、「チャンス!」とばかりに増殖します。

    そして、腸の粘膜に、黄白色の病巣を作り出すのです。

    いつも腸の中にいた常在細菌たちが、いつの間にかディフィシルちゃんに置き換わっている…これを菌交代現象と言います。

     

    このように、菌交代現象で、ディフィシルちゃんが腸の中を席巻します。

     

    ディフィシルちゃんは、ボツリヌス菌破傷風と同じように毒素を作り出します。

    毒素は、腸の粘膜を傷つけ、下痢を引き起こします。

    「下痢を起こした患者さんの腸の中に、黄白色のポツポツが見られる、まるで膜ができているみたいだ。」ということで、偽膜性腸炎と言います。

     

    上で取り上げた国家試験に出てくる患者さんも、下痢をしていましたね。これは、ディフィシルちゃんのせいだったのです。

     

  4. 偽膜性腸炎の治療は難しい

    抗菌薬投与で偽膜性腸炎になってしまった…そんな時どうやって治療すればいいのでしょう?

     

    そんな時は、少し特殊な抗菌薬を使います。(バンコマイシンメトロニダゾール

     

    もちろん、治ることもあるのですが、治りにくかったり、せっかく治っても再発することもしばしば…。

    なんと、15〜30%は再発すると言われています。

     

    それもそのはず、もともと抗菌薬のせいで菌交代が起きたので、抗菌薬が効きにくいのです。

    さらに、偽膜性腸炎を別の抗菌薬で治療中に、その抗菌薬がさらに常在細菌たちにダメージを与えひどくなるケースもあります。

    常在細菌たちが復活しないと、病状は改善しません。

     

    このように、なかなか偽膜性腸炎の治療は難しいのです。

     


今回は、抗菌薬で腸内細菌が乱れ、菌交代現象というものが起きるお話をしました。

特に、クロストリジウム・ディフィシルが引き起こす偽膜性腸炎は治りにくく厄介な病気です。

 

今回は、菌交代現象だけでなく、クロストリジウム・ディフィシルも覚えて帰っていただけると嬉しいです。

 

 




ハリソン内科学 5版 p883〜886

厚生労働省 医師国家試験 https://www.mhlw.go.jp/topics/2012/04/tp0420-01.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください