【tubu.59】病院で血液検査の結果をもらったけれど…②【血液検査を理解するコツ】

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59.病院で血液検査の結果をもらったけれど…②

前回→【tubu.58】病院で血液検査の結果をもらったけれど…①【いっちょんわからん!(方言)】

 

( @∀@)

みなさんこんにちは。Dr.かづきちです。

 

前回、「病院で血液検査の結果をもらったけれど…①」血球のお話をしました。

 

今回取り上げたい、血液検査の項目は「生化学」です。

だいたい血球の後に書かれていると思います。

 

*目的によって、検査項目は変わります。今回は一般的なデータを記載しました。

*基準値は検査機関によって異なる場合があります。

 

項目が多くて、何がなんなのかよくわかりません。

 

「生化学」というワードだけで逃げ出したい人もたくさんいると思います。

特に医学生は「生化学」というワードに拒絶反応を示す人もチラホラ…。

 

しかし、この検査項目がわかればきっと「生化学」も面白くなるはず!

 

  1. 生化学の検査で考えることはたったの3つ!

    たくさんの項目が並んでいる生化学の検査項目ですが…

    書いてあることは意外とシンプルです。

     

    生化学検査では次の3つを考えればOK!

    1、内臓の働き

    2、栄養状態

    3、ミネラルのバランス

     

    え、これだけ?と思う方もいるかもしれませんが、実は意外と奥が深いんです。

    それでは、今回は「内臓の働き」を詳しく見ていきます。

     

  2. 「内臓の働き」

    「内臓」と言っても、身体の中にはいくつもの臓器があります。

     

    心臓、肺、肝臓、胃、腸、腎臓、膵臓…。

     

    他にも、筋肉や神経などいろいろありますよね。

     

    中でも、注目したいのは肝臓腎臓です。

    この2つは、たくさんの血液が流れ込んでいる臓器です。

    しかも、ただ血液が流れ込むだけでなく、血液ともののやり取りをしたり、血液中のゴミを外に捨てたりしています。

    肝臓腎臓は、血液と密接に関連している臓器なのです。

     

    だから、肝臓腎臓に異常が起きると、すぐ血液に影響が出ます。

     

    逆に、脳や神経、肺、消化器などの機能異常は、一般的な血液検査では、はっきりとはわかりません。

     

  3. マルチな働き肝臓

    肝臓は、一言では言い表せないほどたくさんの仕事をしています。

     

    お酒を飲んだ時、そのアルコールを解毒してくれるのは肝臓です。

    ご飯をたくさん食べた時、その栄養を処理してくれるのは肝臓です。

    お腹が空いた時、空腹でもいろいろな臓器に栄養がいきわたるようにしてくれるのは肝臓です。

     

    このように肝臓の働きは、挙げればきりがありません…。

     

    そんな肝臓の働きを見る項目はコレ

     

    肝臓の働き別に色分けしてみました。

     

    1)ASTとALT

    まずみて欲しいのは、ASTALT

     

    肝臓の細胞の中には、ASTALTという名前の酵素がたくさん入っています。

    ASTは筋肉や心臓など身体の他の臓器にもありますが、ALT肝臓に特徴的な酵素です。

    もし肝細胞が壊れると、ASTALTが血中に出てきます。逸脱酵素

     

    このため、ASTALTが上昇していたら、「肝細胞が傷ついているのかも」=「肝機能障害?」と考えます。

     

    2)肝臓の合成能を見てみよう

    次にみて欲しいのは、黄色で囲んだ項目たち。

    CHEコリンエステラーゼ)、総蛋白TP)、アルブミン総コレステロールT-Cho)、HDL-コレステロールLDL-コレステロール中性脂肪CRP…いずれも肝臓で作られているものです。

    このように、肝臓は「工場」としていろいろなものを作っています

    *そういえばCRPって以前、免疫の話でも出てきましたね!(tubu.23

     

    もし肝臓が障害されて、肝臓の働きが悪くなってしまうと、「工場」の機能も低下してしまいます。

    すると、血液中のコリンエステラーゼ、アルブミン、総蛋白、総コレステロール、中性脂肪の値は少なくなってしまいます

     

    例えば、肝硬変や重症肝炎などで、肝臓の細胞が傷ついてしまうと、これらの数値は下がります。

    黄色い項目は、「工場」としての肝臓の「ものをつくる力」を見る数字だと思ってください。

     

    3)肝臓と胆汁

    次は、青色で囲まれた項目、ALPγ-GTPをチェックしてみましょう。

    その前に、実は「工場」として肝臓はもう一つ大事なものを作っています

    それは、胆汁

    胆汁は、胆がつくから胆のうで作られているのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、胆汁肝臓で作られているのです。

     

    肝臓で作られた胆汁は、胆のうに蓄えられます。蓄えられた胆汁は、食後に栄養(脂質)を吸収するために、消化液の一つとして腸内に分泌されます。

    この胆汁の中に排出されるものが、肝細胞が持っているALPγ-GTPです。

     

    もし、胆汁の通り道が狭くなったり、塞がったりして、胆汁が流れにくくなったら、どうなるでしょうか???

     

    胆汁はきちんと腸内に分泌されずに、胆道内に溜まってしまいます。(胆汁うっ滞と言います)

    そして、行き場を失った胆汁は、血中に逆流します。

    すると、血液中のALPγ-GTPが上昇してしまうのです。

     

    だから、胆石が詰まってしまうとALPとγ-GTPが上昇します。

     

    ちなみにアルコールを飲んでいる人は血液検査でγ-GTPが高くなりやすいので注意が必要です。

     

    4)ヘモグロビンを捨てよう

    では、最後にの四角で囲んだT-BilD-Bilを見てみましょう。

    これらは、総ビリルビンと直接ビリルビンのことです。実は、これ以外に間接ビリルビンというものもあります。

    直接ビリルビン(D-Bil)間接ビリルビン(I-Bil)総ビリルビン(T-Bil)」と考えるといいでしょう。

     

    以前、赤血球の中には、ヘモグロビンがあるというお話をしました。(tubu.2

    このヘモグロビンも古くなったら捨てる必要があります

    まず、古くなった赤血球は、脾臓で破壊されます。そして、ヘモグロビン間接ビリルビンになって、肝臓へ運ばれます。

     

    さて、間接ビリルビンを受け取った肝臓は、これを胆汁の中に捨てようとします。

    しかし、この間接ビリルビンは、油には溶けますが水には溶けません

     

    そこで、肝臓抱合という一手間を加え、間接ビリルビン水に溶けやすい直接ビリルビンに変換します。

    直接ビリルビンは、胆汁に捨てられ、消化管へ排出されます。

    *そういえば、便の色って茶色ですが、実はこれはビリルビンのせいだったのです!

     

    では、ビリルビンの数字に異常が出るのはどういう時でしょう?

    まず1つ目は、赤血球がたくさん壊れた時です。赤血球がたくさん壊れると、ビリルビンが増えてしまいます。そのため、間接ビリルビンの値が上昇します。

     

    2つめは、肝臓が弱ってしまい、うまく「抱合」できない時です。間接ビリルビンから直接ビリルビンを作ることができなくなってしまいます、これではビリルビンを外に捨てることができません。

     

    3つめは胆汁が詰まってしまった場合です。胆汁が詰まると、胆汁は血液中に逆流します。すると、胆汁の中の直接ビリルビンが血中に戻ってしまいます。そのため、胆汁うっ滞では直接ビリルビンが上昇します。

     

    このようにビリルビンの変動で、肝臓やそれに関係するものの状態を推測することができます。

     


さて長くなりました…。

肝臓に関わる数字ってたくさんあるんですね。しかし、仕組みがわかれば結構面白くありませんか???

 

今回、みなさんにぜひ覚えていただきたいのは、

血液検査の生化学では

1、内臓の働き

2、栄養状態

3、ミネラルのバランス

3つを考えればOKということです。

 

検査値って奥が深い!

 

次回は、「内臓の働き」のうち、今回お話しできなかった腎臓についてお話しします。

 

次回→Dr.かづきちのつぶやき【ストレスは思いがけないところに…】

 

参考文献

異常値の出るメカニズム 第6版 医学書院 河合忠

 

 

 

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