【diary19.5】Dr.かづきちの闘病日誌【番外編2:病状説明という地獄】
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番外編2.病状説明という地獄
実は退院予定日の2日前に、腎臓内科の部長から腎生検の結果の説明がありました。
つまり、魔の8月1日の前日です。その頃、主治医は夏休みでした。
腎生検では、腎臓に針を刺し、4回に分けて組織を取ってきます。
そして、それに色をつけて、どんな状態かを観察します。
特に今回の場合、腎臓の中の糸球体と言われる構造がとても重要になってきます。
組織の中に入っている糸球体が、ある程度、数採取できていないと、正確な病状はわかりません。
また、糸球体は特殊な染色で色をつける必要もあります。
そのため、4回に分けて採取した組織のうちの1つは、特別な施設に送られました。
今回、腎臓内科の部長から説明を受けたのは、手元に残った3つの組織標本についてでした。
その結果はあまりに悲しいものでした。
出血して大変な目にあったにも関わらず、なんと取れていた糸球体はかなり少なかったのです。
だから、特別な施設に送った組織の状態によっては、確定診断に影響が出ると言われたのです。
さらに…
手元に残った標本の中で見つかった糸球体には、できれば見つかって欲しくない所見がありました。
それは、線維性半月体と言われる構造です。
半月体とは、糸球体でひどい炎症が起きた場合に見られる構造です。
線維性とは、ちょっと古いものということを指しています。
それが、見えたということは、以前にかなりひどい炎症が起きていたということになります。
組織が十分に採取されていないのではっきりとはわかりませんが、他の糸球体もかなりダメージを受けている可能性も否定できません。
こんなに大変な思いをしているのに、確定診断もあやふやになる可能性があり、もしかすると私の腎臓はかなりダメージを受けているかもしれない…そう思うと私はめまいがしました。
それでも、ここまでは、まだ仕方がないと思えたのですが…
引き続き、病状説明を受けた時、とんでもないことが発覚しました。
なんと、カルテに膀胱タンポナーデになったことが全く書かれていなかったのです。さらに、主治医は、部長に膀胱タンポナーデになったことを伝えていなかったのです。また、その時に圧で尿道カテーテルが抜けたことも知りませんでした。
それだけでなく、私が逆流性食道炎で飲んでいる薬に関しても、なぜこの薬を飲んでいるのかと部長に尋ねられました。主治医は、私の既往歴や主訴を全くカルテに書いていなかったのです。
よく見ると食事が摂れていないと言ったはずなのに、食事摂取良好とも書かれていました。
(ちなみに私が食事量を伝えた時、その場に看護師、くましゃん、他の医師もその場にいました。なのに…良好と書かれていてました。)
病状説明を受けた時、母とくましゃんも一緒でしたが、私たちは非常に困惑しました。
部長はカルテと主治医からの報告に従って病状説明をしているようだが…部長が説明している話と、事実があまりにも違いすぎる。カルテに事実と異なることが記載されていたり、そもそも事実が記載されていなかったりと言ったことが多い…。(これって医師法に抵触するのでは…?)
もう、意味がわかりませんでした。
母、くましゃん、私は三人とも医師です。
カルテに事実を記載しなかった、事実と異なることを記載したなんて、全くもって理解できません。
また、報告すべきことをきちんと部長に報告していないことも、意味不明です。
三人は、何が起きているのか、全く理解できませんでした。
私たちの反応を見て、部長はあまりにもカルテに抜けが多いことに気がついたようで、その場で自分が主治医になると言われました。
入院中の主治医交代なんて、そう滅多にあることではありません。
こうして部長からの説明が終わった時、私の怒りは頂点に達しました。
こんなに辛い思いをして、こんな目にあうなんて…
世の中、なんて理不尽なんでしょう…。
あまりにも辛かったので、お世話になった病棟の看護師長さんの前で泣いてしまいました。
その日は、不安と怒りと悲しみで、ほぼ眠れませんでした。(今思うと、明らかに睡眠障害ですね…)
「でも、あと2日で退院できるから…」と自分に言い聞かせました。
そしてついに、魔の8月1日を迎えることになるのです。
まだまだ、理不尽の雨は無情に降り注ぎます。