【diary70】Dr.かづきちの闘病日誌【かづきちが絶望した理由】
前回→研修に戻ってきたよ
70 かづきちが絶望した理由
前回、病棟勤務に復帰したかづきち。
いきなり、K先生から放置される事件が発生し、混乱状態に…。
そのとき気がつきました。
「そういえば産業医って何してるんだ???」
今回は、そんな疑問をいだくかづきちに、ふとある連絡が届くのです。
~産業医ってなんだろう~
復職初日、いきなりO先生に投げ渡され(?)、かづきちは何をどのように仕事をしたらいいのか全く分からない状態になりました。
幸いO先生が助け舟を出してくれたため、O先生と一緒に患者さんを受け持つことになりました。
結局この日は、患者さんのカルテを読み、内科の薬をいくつか処方して時間が過ぎていきました。
業務はそれほど多くなかったため、調子の悪いかづきちでもゆっくりと確実にこなすことができました。
これで「復職できたんだ」と安心しましたが…
さっきのK先生の対応と、「この職場の産業医って一体何してるんだろう…?」という疑問がひたすら頭から離れません。
そもそも、産業医は精神科医の診断をもとに復職者と話し合って、復職したときの調整を行う職業ではなかったのか?
かづきちは、そのように習った気がするのですが、この職場では産業医の影が全く見えません。
むしろ私の復職調整を行ってくれたのは、精神科主治医のF先生ですし、窓口は産業医でもなんでもないK先生でした。
これは本来なら、職場の産業医が精神科主治医の意見を聞いて、復職者と話し合って復職内容を決める案件です。
加えて職場(K先生)からは休職後一度も直接的な連絡を受けていませんし、産業医との面談の話も全く出ませんでした。
明らかにおかしな話なんです。
そして疑問を抱いたまま、医局に戻ると…
医局秘書さんから話しかけられました。
「かづきち先生、産業医面談があるそうなので、事務に連絡してくださいとのことです」
え!?!?産業医!?
いまさらそんな連絡が来るの???
今まで一度も産業医面談なんてなかったのに、復職後に面談って意味不明です!
かづきちは「了解です」と返事をしましたが、頭の中は大混乱!
その後、事務で復職手続きと、産業医の面談の予約をしましたが、これで本当にいいのだろうかという疑問だけがかづきちの頭の中をグルグル回っていました。
とても胸が重苦しく、気分が悪い出来事でした。
そもそも一体、「産業医」ってなんなのでしょうか???
さて、ここで本来の産業医のお仕事を確認しておきましょう。
ある職員が心の健康に不安を抱えたとします。
そのときにまず、面談を行なって精神科受診を促すのは産業医です。
そして、精神科の主治医の診断で休職が決まります。
このときに、今後どのように休職し、どのように復職するのかを産業医が主治医の意見をもとに検討します。
次にその職員が復職するとき、産業医の腕の見せ所です。
まず主治医が復職可能という診断書を書きます。
そして、産業医が主治医の意見を聞き、その職員の現状を把握し、職場に助言を行います。
職場は復職調整を行うのですが、これをお手伝いするのが産業医です。
※産業医は職員(左上)、主治医(右上)、職場(下)の三者との調整役のイメージ
復職調整とは主に、どのような職務で何時間働かせるのか、他の職員への周知と教育、何かしら支障が出た場合の対応方法などを検討し準備を整えます。
実際に復職する前後は、産業医はその職員と連絡を取り、復職をサポートします。
かづきちの親族には産業医がおり、その人は上記のように働いています。
また厚生労働省も、産業医が復職のための調整を行うことを推進しています。
しかし、実際にかづきちが休職したときに産業医が出てきたかというと、一度も出てきてないのです。
もちろんくましゃんが休職した際も一度も産業医は出てきませんでした。
復職して、初めて見知らぬ「産業医」と面談しろと電話が来たのです。
その後よく聞いたところ、職場の人事職員が「産業医との面談は復職時に必要なことだから、形式上やってくれ」というのです。
つまりこの職場は、「名ばかり産業医」しかいないのです。産業医との面談は、「形式的なもの」。
そういえば以前、この職場では復職に関して様々なトラブルが起きていることを耳にしました。
それもそのはず、医師の集団が集まる病院という職場にもかかわらず、「産業医」はただのお飾り。
誰も、「産業医」の役割なんて理解していないのです。
産業医の復職者への介入、復職調整や復職者への調査、調整など全くない…。職場の上層部には産業医資格を持つ者がいるにもかかわらずです。
これではスムーズに復職できる職員なんているわけがありません。そしてそのおかしさを、誰も指摘しない。
かづきちは、医療職が集まるこの職場に絶望しました。
くましゃんにはこの職場で、復職して欲しくないと切に思いました。
(もちろんかづきちの場合は、精神科の主治医F先生が頑張ってくれたので、復職までたどり着くことができました。F先生ありがとうございます。)
こうしてかづきちの長い長い復職初日は、絶望と共に終わりを迎えるのです。
次回、長い1日の終わりに…。
※産業医ができることに関しては厚生労働省の冊子をご覧ください。